6月の在宅看取りは7名でした。

そんなに、あわただしさを感じなかったのは、スタッフ一人ひとりがものすごく成長して、それぞれが、素晴らしい看取りをしてくれて、充実感も持ちながら、楽しそうに仕事をしてくれていたからでしょう。

認定看護師と今年、認定教育課程入学予定者以外はすべて、あすか山訪問看護ステーションにきて、初めて訪問看護を始めたスタッフばかりです。

現在、もっとも古いスタッフでも、わずか、3年半でしょうか。今では、80名以上のチームリーダーをしてくれています。

素晴らしい感性の持ち主で、在宅看取りも患者さんや、家族に寄り添い引き受ける覚悟を持ち、信頼関係をもってくれ、通夜にも行き、グリーフケアもきちんとしてくれています。

ほかのスタッフも宝石の原石のような魅力があります。

私は、この一人ひとりの素晴らしいスタッフから、学べることが本当にうれしいです。

あすか山訪問看護ステーションの管理者になり、楽しいまま、あっという間に4年がすぎ、今年は5年目となります。

初めのころの利用者34人、常勤換算2.5人以下だったころを思い出します。

赤字がものすごくて、翌年の初めて出席した理事会で、あすか山訪問看護ステーションは、廃業に、という厳しいご意見をいただいた時は、涙がにじんだものです。

でも、そんな初めのころも、所長として一度も運営に不安になったことはありませんでした。

そのころも、毎日、大笑いしながら訪問看護を行っていましたし、利用者さんによい看護を提供することを現在と変わらない強い思いで、行っていましたから、なんの迷いもありませんでした。

周囲や、規模が変化しても、私の根本は単純です。

どの患者さんへも、「自分の子供が仮に最後の時を迎えるような場面で行うひたむきな看護」を提供すること、たとえ、技術はまだ未熟でも、患者さんへの思いは、そうあるようにしています。

そして、良心的な看護とは、学習し続ける姿勢だと思います。

それは、自分より大切な存在を持った経験が、看護師としての強い柱づくりを手伝ってくれたように思います。

自分より大切な人とのかかわりは何も子供でなくてもよいのです。

ボランティア経験がそれを助けてくれるでしょうし、両親への思いでもよいでしょう。

自分のことだけを考える人生は、自分を辛くさせているすべてのことが、敵のように感じてしまうと思います。コミュニケーションが難しい患者さんで、訪問するのがストレスな場合、自分の看護を苦情として訴える患者、はたまた、管理者であれば、スタッフが失敗して自分がその負担をかぶらなければならない場合、自分が引き受ける覚悟がなく、その自分を苦しめる対象に怒りの感情を持ってしまうのです。そんな人は、患者さんや、スタッフへ容易に表情として出てしまい、相手との距離はもっと遠くなります。

これらのことは、難しい患者、失敗するスタッフの問題ではなく、自分のことを第一に考える、幼い人間性から生じることだと思います。

でも人は必ずかわります。

よい人との出会い、自分を見つめる機会が必ず人を変えるのだと思います。

あすか山訪問看護ステーションで懸命に自分の看護、ケアを行っているスタッフのその結果が、この162名の利用者の数字となっているのでしょう。