ゆっくんって、ご存知でしょうか。子供のプールの大人版のようなもので、ベッドの上でお風呂に入ることができます。

 あすか山訪問看護ステーションでは、このゆっくんが、ターミナルケアの緩和に大活躍してくれます。がんなどの最後は、全身の倦怠感や、痛み以外の様々な症状がでて、アロマオイルや、リラクゼーションでとったり、花、自然のものをりようしたりとケアもさまざまですが、とっても良いのが、お風呂です。

入りたいと希望があれば、亡くなる直前も、短時間で、お風呂にはいります。

すると、皆さん、ほー、と大きな深呼吸で、まるで、露天風呂に入った時のような、力が抜けて、全身が温まり、にこやかな顔をなさいます。鉛のような体が少し、やわらかくなる、とある患者さんはおっしゃっていました。

そして、同時に覚醒の効果もあり、それまで、ボーとしておられた患者さんの意識がはっきりして、家族と大切な会話をされたりします。

 

 そのあと、深い眠りが得れることができ、目が覚めたときからだと心が少し、楽になるようです。

このお風呂のタイミングが大切なのです。必ず、在宅でお看取りをする経過の中で、このお風呂のタイミングがあるものです。モルヒネなどで、痛みのコントロールが基本的にでき、全身の倦怠などの、薬ではなかなかすっきりしない苦痛、心の悲鳴があがるとき、このお風呂はどんな、薬より効き目があります。

 昨日もこのタイミングが、訪れたので、急きょスタッフにゆっくんをもってきてもらい、患者さんにお風呂に入ってもらいました。

ご家族と一緒におこなうことで、本人が楽になることのケアができる喜びが家族にも得られるようです。

 必ず、みんなが笑っています。

お風呂のあと、氷を美味しそうにほおばり、「よかった」とおっしゃる患者さんの笑顔がみんなの心を暖かくしてくれます。

 私自身が、いつも患者さんからケアを受けているのです。

この様な患者さん、家族、ケアする者が満たされる同じ経験をすることで、最後の時を一体感を持って満たされた心で、お別れをすることができるのだと思います。

 緩和ケアに、とっても大切な力を貸してくれるゆっくんは頼りがいのある緩和の道具です。