専用通学車両試走の協力までの経緯

医療的ケアを必要とする児童・生徒さんは通学車両内での医療的ケアの安全性の確保のため、これまで通学は親に頼らざる得ない状況でした。東京都はこの喫緊の課題に着手し、平成30年度から、全都立肢体不自由学校18校において、専用通学車両の運行を決めました。医療的ケアを担うのは看護師となりますが、その人材確保が充分に進まず、7月の専用通学車両の試走時に際し、6月の末に急遽あすか山訪問看護ステーションへ協力依頼が舞い込みました。東京都教育庁が東京都訪問看護ステーション協会に委託し、協会から当ステーションに依頼という形でした。東京都の訪問看護事情をよく知る協会が協力先を探しても見つからず、困った末に頂いたご相談でしたので、受託することといたしました。朝の専用通学車両への同乗となりますと、時間は7:50から勤務できる看護師の確保をしなくてはなりませんでした。そのため、調整が難しく実際に同乗したのは副所長と所長の二人で対応することとなりました。

同乗の実際

試走を実施するにあたり、特別支援学校内にて事前会議を2回行いました。事業の説明、日程確認、学校看護師との情報共有、車両乗車の確認、本人、親との顔合わせをおこないました。同乗は計9回、うち親の同乗は5回、教員の同乗は9回全てでした。乗車前には準備として車内に緊急時に必要な物品の搭載をおこない、待ち合わせの場所へ向かいます。待ち合わせの場所に到着したら親から家での様子を確認し、乗車直後に体調の確認をおこないます。乗車中の様子は専用通学車両乗車日誌に記載し、下車時に担任教員に申し送り、児童・生徒さんは保健室を経由し、教室に向かいます。今回の試走では初めてお会いする2名の方の通学車両の同乗をおこないました。

試走に関わった際の課題

実際に同乗した際に課題と考えることがいくつかありました。車両内での医療的ケアを実施する際に重要なことは、子どもの安全と安楽が確保されることです。そのために、医療的ケアの実施方法を学校看護師と情報共有していましたが、それだけでは子どもの安全と安楽は確保できません。子どもの示す個別のコミュニケーションの方法を捉えることや子どもが不安にならないよう、子どもが日頃興味を示していること等の情報を得ておかなくてはなりません。酸素飽和度モニターが示す数値のみに捕らわれず、子どもが苦痛であるか否かを見極めることが重要ですから、子どもが示すコミュニケーション方法はとらえておいかなくてはなりません。また、子どもの興味のある話題で話しかけたりすることで不安の軽減に努めました。更に、体温調整の難しい子どもたちですので、車内温度の管理も重要です。車内環境や子どもの様子に気を配り、苦痛を素早く察知し、苦痛の少ない医療的ケアを実施しなくてはなりません。今回のように馴染みでない看護師が同乗する場合、親が安心して子どもを委ねるための配慮が必要です。そのため、同乗中に親と日頃の様子を聞くなどコミュニケーションをはかり、医療ケア実施時には確認をしてもらうなど、不安感の軽減に努めました。親との信頼関係を築くためには相互を知る時間とその機会を十分に持つことが必要だと考えます。

9月に入り実施状況はどうなっているのか

看護師確保はなかなか進まず、東京都訪問看護ステーション協会と東京都教育庁間で話しあいがもたれ、引き続き看護師確保を進めることを前提とし、都内各訪問看護ステーションで訪問看護を提供している子どもさんの専用車両同乗が可能であれば、同乗を求めるという案が提示されました。8月の中旬にあすか山訪問看護ステーションにも依頼がありました。数名の対象となるお子さんたちがいましたが、人員の確保や調整は難しく、週に1日であれば調整が可能であったため、そのようにお返事したところです。

どうすれば看護師確保がスムーズに進むのか?

医療的ケアを必要とする子どもさんへのケアはやはり子どもの看護経験のある看護師がより担いやすいのではないかと思います。しかしながら現在どこの訪問看護ステーションでも人手不足は常態化しており、ステーションにおいて新たな人材確保が必要となります。そこで新たな人材確保の一案として、子どもの療育や看護に携わったことのある定年退職した看護師さんや離職中で短時間勤務を希望する看護師さんの起用をすすめてみてはどうかと考えています。培った知識と技術を眠らせることなく活用し、且つ短時間で身体的負担も少ないため、継続のしやすいのではないかと考えます。もちろん、日頃の訪問看護同行研修や同乗実施時の同行もおこない子どもさんの個別の状態をよく知ってもらい進めていくことが必要だと思います。

定年退職した看護師さんや離職中で短時間勤務を希望する看護師さんはいませんか?

働いてみたいと思う看護師さんがいらっしゃまいしたら是非ご一報を!電話でもメールでも構いません。

電話 03-5959-3121

メール asukayama.st@jvnf.or.jp

担当 所長 田中道子