もくじ
お話を伺った皆さんのご紹介
新卒入社された皆さん
☆…学生時代ハートフリーで実習
1 ハートフリーやすらぎでの経験年数 / 2 いつ訪問看護を知ったか / 3 プチ紹介

倉本 夏妃さん
- 1年
- 学生時代の講義
- 親の強引な勧めで無理やり看護師になったが今では訪問看護を楽しむピカピカの1年生

大藪 涯さん
- 2年
- 学生時代の講義
- 沖縄出身、変化を見過ごさない鋭い観察力から先輩やご家族からも信頼があつい

西 裕希さん☆
- 2年
- 学生時代の講義
- 医療ドラマをきっかけに看護師をめざす。利用者さんを通して制度にも興味を持つようになった

倉本 夏妃さん☆
- 3年
- 学生時代の講義
- 何かに特化せずオールマイティな訪問看護師をめざしている

大須賀 朋也さん☆
- 4年
- 学生時代の講義
- 理想の看護師像がここにあるとビビっときたことから入職を決めた。ハートフリー初の男性育休を取得した1児のパパ

中田 彩香さん☆
- 6年
- 学生時代の講義
- 今年、認知症看護認定看護士の教育過程に進学する向学心あふれる看護師

西村 公香さん☆
- 8年
- 学生時代の講義
- ハートフリーは自分の家族も含めて大事にしてもらっているという実感を持つ2児のママ

新矢 妙美さん☆
- 10年
- 学生時代の講義
- 新卒採用1号!10年経ってもこの訪問看護ステーションは100点です!
幹部の皆さん
1 役職 / 2 プチ紹介

宝積 さとみさん
- 主任・実習指導担当
- ステーションのお母さんのようにみんなから頼られる存在

田端 支普さん
- 管理者
- 自分の看取りをしてもらえる看護師と思って育てていると語る、その笑顔はステーションの太陽のような存在

大橋 奈美さん
- 統括管理責任者(立ち上げから管理者)
- 「ありがとー!」が口癖。定期的に心に響く言葉をプリントしては、自らトイレの各個室に貼りに行ってる
医療法人ハートフリーやすらぎ(以下「ハートフリー」)は、住吉診療所、訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ、居宅介護支援事業所、ナーシングデイやすらぎが併設されています。事業所がある大阪府住吉区の高齢化率は28.8%*で、区内には訪問看護ステーションが50カ所もある激戦区です。2004年に開設された訪問看護ステーションハートフリーやすらぎは常勤換算2.5人からスタートし、今では常勤換算22.4人まで拡大しています。
*出典1:日本看護協会 平成20年度老人保健健康増進等事業「訪問看護事業所数の減少要因の分析及び対応策の在り方に関する調査研究事業」、病院の離職率12.6%、訪問看護の離職率15.0%。(平成19年度)
*出典2:地域医療情報システムより
総務省令和 5 年「統計からみた我が国の高齢者」によると人口に占める高齢者人口の割合は 29.1%
1.明るく活気ある事業所・かかわる人全員がハートフリーファミリー
ハートフリーにお邪魔すると、「こんにちは~」と明るく元気な声が飛び交い、さわやかな笑顔が広がります。若手もベテランも入り混じって、何やら楽しそうにおしゃべりをしながらお昼休憩をしています。まるで学校の仲良しクラスのようなハートフリーの事業所では、あちこちで明るい声や笑顔が見られ、いきいきとした表情に一気に引き込まれました。
Q1 まずは皆さんにとってどんな職場なのか伺ってみました。

倉本さん(以降敬称略)「職場の雰囲気が楽しく明るいです。相談もしやすいし、尊敬できる先輩がたくさんいます。」
大藪「話しかけにくい先輩がいなくて、どんな小さな困り事や悩み事でもすぐに話せます。それに困りごとをほっとけない人が多くて(笑)、解決する手段をいっぱい持っている先輩ばかりです。」
大須賀「先輩の何気ない言葉かけが勉強になるので、お手本がたくさんいます。」
中田「お世辞抜きで上司が素晴らしいです。人間性が魅力的で、自分もその人間性を養わなくちゃと思っています。」
点数をつけるとしたら何点?という質問に対し、なんと、全員が「100 点!いや、それ以上です!」という回答。ますます興味がわく事業所です。
Q2 職場は楽しいですか?
大須賀「このステーションは裏表がない(笑)。お客さんが来てるからと、その時だけとりつくろうことがないので、新卒として入職したけどすんなり溶け込めた感じです。」
西「半年に1回個人面談があって、その時間はひたすら褒められます(笑)。だから面談が終わるとモチベーションが上がります。自己評価表では、「去年こんなことができなかったけど、今はできるな」と成長が見えるのが嬉しいです。」
大橋「面談のときは褒めることしか話さないですよ。面談のときに注意されて何が楽しい?注意指導はその瞬間、そのタイミングだけだと思っています。」
Q3 長く続けられるということは、ベテランさんにとっても働きやすいですか
西村「私は子どもが2人いますが、子どもの体調が悪い時って、突然休むことになるので申し訳ない気持ちになります。
でも、『子どものことはお母さんにしかできないからしっかり休んで』と言って下さるのでありがたいです。なので、誰かが休んだ時は「私が行きます!」という気持ちになります」
大須賀「息子が生まれたときに『育休を取りなさい』と言ってくださり、この法人の男性職員の育休第1 号でとりました。若い男性スタッフも増えているのでモデルになればと思って見渡すと相談できる先輩がいっぱい!」
新矢「ここで就職をして、結婚や出産をして、産休育休の後、また復帰して、いろんなライフステージを、ハートフリーと共に過ごさせてもらっています。皆さんが受け入れてくれたから今までやってこれたと思います。スタッフを家族と同じように大事にしていただいています」
Q4 新人もベテランも、この職場の居心地の良さが伝わりますが、事業所として意図的に取りくんでいることはあるのでしょうか

田端「新卒や入職して間もないスタッフに係を持ってもらっています。
係の種類はさまざまで「ホワイトボード(訪問予定)管理係」や「清掃割り当て表作成係」などがあります。ステーションでの係を持つ意味は、「ステーションの役に立っている」と感じてもらえたり「自分がステーションに居る意味」を持ってもらうためです。居場所を作ることで、職場が安心できる場になり、その人の存在自体を認めることに繋がると思っています」
なるほど。係を通して個々の存在意義を自他ともに認識できる!評価もあえて本人にわかるように伝え、職員一人一人の存在を認めることを大事にしているからこその工夫ですね。
Q5 訪問看護師が辞める理由は、緊急当番の負担感が上位にあがっているのですが、皆さんはどうですか?

山下 「うちは直接利用者さんからかかってくるわけではなく、何かあったら利用者さんから受け持ちの看護師に電話があって、受け持ち看護師から当番に連絡が来る形です。利用者さんのことをわかっている看護師から電話が来るので不安はないですね」
中田 「最初は電話が鳴るたびにめちゃくちゃドキドキしていました。でも、だんだん経験を重ねると、電話を取った時の声のトーンで、これは緊急性が高いかもと予測できるようになってきたので、ドキドキしなくなりました。日中もかかってくるので、対応している先輩の様子をみて知らないうちに 覚えたんだと思います」
倉本 「私は 1 年目なので緊急対応はまだやらないですが、きっと自分が できるようになってからつけてくれるという信頼があります。」
事業所の体制と先輩の声かけから、一般的に言われている負担感はあまりないことがわかりました。ハートフリーは若手看護師、ベテラン看護師、産後復帰された方、育休を取ったパパなど、いろんな人が一緒に過ごしていました。 インタビューの中で「職員同志の関係性って看護の質につながると思います」という言葉を聞きました。 いつでも相談できる関係の中で、困りごとは一人で抱えず・放っておかず、多様な価値観、看護観でその日のうちにフォローできる環境は、看護の質を高めることに直結しているのでしょう。 とにかく職員の皆さんはハートフリーが大好きなことが伝わりました!
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1日中、あちらでも、こちらでも、相談・アドバイスする姿がありました
2.きっかけは学生実習 ~楽しさを伝える実習指導~
若手看護師の皆さんは学生時代の講義で初めて訪問看護の存在を知ったそうです。その後、訪問看護実習を経て就職したいと考えるようになったということは、実習が大きなポイントだったことが分かります。 さっそくインタビューしてみました。
Q1 訪問看護の実習はどうでしたか?率直な感想を聞かせてください
大藪「在宅は、利用者さんのお話をゆっくり伺えたという印象が強いです。病気や治療の前に、その人自身のことを知ることが大事だと経験できたのが良かったです」
西(実習先ハートフリー)「お家に訪問するのは楽しかったです。利用者さんだけでなく家族に対して、どんな声かけをして、どうやって表情を読み取るか看護師さんに教えてもらったのが印象に残っています」
大須賀(実習先ハートフリー)「病院だと医療者側主体だなと感じていましたが、訪問看護では、常に主語は利用者さんであり家族さんなんですよね。これぞまさに自分がしたい看護だと気が付けました」
山下(実習先ハートフリー)「こんな素敵な職場があるんだと衝撃的でした。まず看護師さんが怖くない(笑)。 あと、病院だとタバコは絶対にダメとか、薬を飲み忘れたら絶対にダメっていうところを、健康状態と本人の希望を合わせて、話し合って落としどころを見つけるとか、あえて本人さんに任せるところが印象的でした。とにかく訪問看護の実習が楽しかったんです」
中田(実習先ハートフリー)「よく「個別性の看護」と聞きますが、訪問の実習で始めて理解が深まった気がしました」


学生さんには、看護の楽しさを伝えることが大事(大橋)
Q2 実習の中で、訪問看護の魅力をそれぞれで感じ取っているようですね。
どのように短期間の実習でこんなにも訪問看護の魅力を伝えたられたのでしょうか。
宝積「指導マニュアルはないんですよ。実習担当者に伝えていることは『優しく丁寧に教える』と、『できる限り直接ケアをしてもらう』という2点だけです。実習担当者から相談があったらアドバイスはしますが、基本的に任せている感じです」
Q3 でも、マニュアルがない中で実習指導する職員が同じように訪問看護の魅力を伝えられるってすごいですね
宝積「『ここに実習来てよかった』と思ってもらえたらという思いだけですね。楽しく生き生きと訪問している姿を見てもらうのが1番だと思っています」
Q4 色々な場面を経験するために、たくさんの同行訪問をするのでしょうか
宝積「いえいえ、その逆です。1件1件の訪問を大事にして欲しいですし、たくさん訪問すると印象に残りづらいと思うので、午前1件、午後1件です。『利用者さんが今まで生きてきた歴史を大事にして、膝と膝をつき合わせてじっくりお話を聞いてください』と伝えています」
Q5 学生実習を経て新卒で就職した看護師は、今では実習担当者に成長されているとのことですが、経験を元にどんな指導をされているのでしょうか
大藪「自分がやっていて楽しいこと、ケアができて嬉しかったことを見つけて、やりがいを感じるのが良いと思っています。 あと、利用者さんの立場や利用者さん家族の立場を、自分と近い存在として考えたり話したりしてケアに関わると、良いケアができると思います」
大須賀「学生時代、実習で辛いことがあって辞めてしまった同級生がいました。だから、学生さんには看護の仕事を嫌いにならないで欲しいと思っています。看護師という仕事はすてきな仕事であり、訪問看護ってこんなに面白いよと伝えられるように心がけています」
山下「病気のことは先生が指導してくださるので、楽しく実習ができたらいいなと思って関わるようにしています」
中田「自分の看護を言語化して伝えるように心がけています。でもこれって意外と大変(笑)。教えてもらう立場だったのが、今は教える立場になったので、ぼんやりではなく、しっかりと言葉にして伝える努力をしています。あとは、できるだけケアに参加してもらいます。印象に残るし、利用者さんに『ありがとう』って言われると嬉しいですよね」
Q6 学生さんと一緒に訪問してみてどうですか?
大須賀「学生さんの姿を見ると初心に戻れます。あと、初対面の場合や事前情報が少ない場合には、こう感じるんだということは勉強になります。多職種に情報共有する時に気を付けるポイントだと思っています」
山下「学生さんに質問されて答えられないと、自分がちゃんとわかってないところなんだと気が付きますね」
訪問看護実習は、短期間でありながらも、その人自身に向き合うことの大切さやありのままのその人を看るという、まさに看護の原点を五感で感じとる生の経験と言えます。そして、実習を受け持つ若手看護師にとっても、自身の看護を振り返る良いきっかけになっているようです。
訪問看護の魅力を伝えるには、マニュアルは必要なかったのですね。看護師が生き生きと働き、相手の想いを共に感じる経験こそが、彼女彼らの人生をも動かす宝になったのでしょう。
それにしても皆さん、自分の想いやケアをしっかりと言語化できていることに関心させられます。ここハートフリーでは、毎朝のミーティングや記録でも、言語化して簡潔に伝えることに意識をおいているそうです。




毎朝8時30分からの申し送り風景
3.何をおいても、職員が大事
新卒から立派な訪問看護師に成長された皆さんを見ていると、新人教育に興味がわきます。
Q1 新人教育はどのようにされているのでしょうか?

田端「ハートフリーは法人内に訪問看護ステーションの他、診療所とナーシングデイ(療養通所介護および児童発達支援事業所)が併設されているので、上手く活用して看護技術や処置方法について経験できる機会を作っています。
新卒1年目は、午前は診療所やナーシングデイ、午後は同行訪問を中心というように組合せています。診療所では採血や点滴、バルーン交換などの技術面の習得ができ、ナーシングデイでは主に小児の吸引や人工呼吸器について習得できます。訪問看護では訪問について全般ですが、多職種連携や家族看護という風にそれぞれに学べる環境があります。」
なるほど、併設施設がある強みを活かして幅広い経験がつめますね。
Q2 でも、診療所で患者さんとダイレクトに接するので不安はないですか
西村「最初はドキドキしました。例えば採血では駆血帯の結び方や血管の探し方など、先輩が横に付いて、手取り足取り教えてもらえました。『失敗しても私がフォローするから』と声をかけてもらいながらできるので心強かったです」
倉本「もともと先端恐怖症があったんです。そのことを先輩に話したら『別にいいんじゃない』と言われて、『え、看護師なのにいいの?』と思いました。
診療所では自分のペースに合わせて指導してくださったので、今では注射も点滴も1人で大丈夫なんです。先輩方の包容力で克服できたと思っています」
先輩の言葉から安心感を得て、自分がダメだと思っていたことを克服できただなんて凄いエピソードですね!相手を受け入れ、できるように寄り添う先輩の包容力ってすごいです。
新人の看護師を診療所に出すのは、リスクを伴うことから、見学だけにしても良いはず。でもここでは「どんどんやってもらう」という文化。職員の持っている力を信じて育てる、という幹部の姿勢を感じました。
Q3 診療所の経験からなにか気が付くことはありましたか
大須賀「受診に来るのは地域の方ばかりで、毎日血圧を測りに来たり、吸入に来たりと、どんどん顔馴染みになるのが新鮮です。毎日顔を合わせていたら、この人はあそこの角に住んでいて、元々八百屋さんだったとわかってくるんです。 例えばその方が訪問看護を利用されていると、環境をフル活用して職員を育成する外来で見聞きしたことと訪問して気が付いたことが繋がるんですよ。その人の生活や地域での物語が自然と繋がって、地域に密着している部分が面白いです」
Q4 1年目は、道を覚えたり、医療処置を覚えるだけでもいっぱいになると思います。それに加えて、生活や地域という観点での気づきが得られるって、なかなかないと思いますがいかがですか?

大須賀「そこは他とは違うと思います。病気が先ではなく、人が先に来る感じがありますね」
大橋「ここは地域の人にも新人を育ててもらってますよ。
『この子は今年から入った看護師なので、皆さんで育ててやってください』と外来で紹介してます」
田端「利用者さんも、本当にみんなを育てくれるので有難いです。名前もしっかり憶えてくれて、私が知らない家族の事や趣味まで知ってくれている事もあります。
私の方が教えてもらう事もあるほどです(笑)また、最初はうまくいかなかった点滴など、『上手にできるようになったで~』とか成長を教えてもらえるのも嬉しいです」
田端さんと地域を巡っていると、手をあげて満面の笑顔で挨拶をしてくれる地域の方々に何人も逢いました。
いち事業所がこんなにも地域に密着しているなんて、看護の目が地域の隅々にまで行き届いていることが伝わる場面でした。
Q5 さて、1年目の同行訪問やナーシングデイでの実践はどうでしたか
西「とにかく手厚い指導で、ゆっくりゆっくりと教えていただきました」
中田「1年目は学ぶことがたくさんあって毎日が目まぐるしく、でも楽しく働かせていただいていた印象があります」
西村「同行訪問では、利用者さんへの話しかけ方など先輩によって看護のスタイルが違うので勉強になりました。方向性は同じでも、この看護師さんの時の利用者さんの反応はこうなんだとか、この人の時はこんな会話をするんだと、色んな場面がみられてたのは面白かったです」
大藪「ナーシングデイでは、対象者が異なることで、同じケアでもその人に合った方法でケアを変えていくんだとか、子ども達それぞれの表現の仕方に合わせてコミュニケーションを取っていくとか気づきが多かったです」
Q6 やすらぎは指導者が決まっているのではなく、全員が気が付いた時に指導してくださる体制のようですね。印象に残っている言葉があったら教えてください
大藪「『今日はすごい落ち着いてたね。落ち着いていると家族の安心にも繋がるから、すごいいいところだよ』とフィードバックしてくれました。褒めてくれたポイントは自分のストロングポイントだと思うので大切にしようと思います。 あと、重症心身障害児のケアでは、自分が長く関わっているので、『そこは任せたよ』と、頼りにしてもらえるところは自分の役割があるという意味ですごく嬉しいです」
西村「先輩に『自分の家族と思って接しなさい』と言われた言葉が印象に残っています。
もしも自分の親だったらどんなふうにしてもらいたいと思う?と、最初に投げかけられた時にハッとした記憶があります」
常にアンテナを張っていて、気づいた時に伝える。どんな小さなことでも「ここが良かったよ」と具体的に褒める。基本的なことかもしれませんが、ベストなタイミングで端的に伝えるので印象深く、本人のモチベーションにつながるのでしょうね。
大須賀「うちのナースはみんな、それぞれの長所(武器)があって、どの先輩も“この看護いいな”と思うんです」
先輩達だけではありません。教えられる側の皆さんも先輩の姿をよく見ていらっしゃる!!今は「先輩の後ろ姿から盗んで覚えろ」という指導はどの世界でもなくなりつつありますが、自分の強みを活かして看護している先輩の行動や言葉は、ひきつけられるのでしょう。
そんな皆さんは日々のケアで大事にしていることを伺うと、皆さん共通して「利用者さんのこと知りたい」と語られます。先輩や職員から大事にされていると、自然とこのような気持ちが育まれるのでしょうか。
Q7 他にこころがけていることはありますか
倉本「同行訪問が学びになるので、先輩はどんな言葉を使って話をしていたか、言葉の言い回しなども吸収するようにしています」
大藪「その人の昔のことやご家族さんの様子とか、今の生活のこと等をできるだけ伺うようにしています」
大須賀「自分が来られて嫌な人にならないように、そして自分が訪問したことで、元気になったとか、少しでも明るい気持ちになってもらえるように心がけています」
Q8 重症心身障害児のケアはベテラン看護師でも意思をつかむのは難しいと思いますが、ケアで心掛けていることはありますか
大藪「その子が意思表示している場所や表現ってどういうことなのか常に考えるようにします。コミュニケーションができないと決めつけないで、その子たちなりのコミュニケーションを考えて接するようにしています」
温かい看護が笑顔をもたらします
皆さんの話を伺っていると、先輩の言葉や環境が、力を持っている看護師それぞれの成長の後押しになっていることが伝わります。

皆さんの話を伺っていると、先輩の言葉や環境が、力を持っている看護師それぞれの成長の後押しになっていることが伝わります。
Q9 短期間でさまざまな経験を重ねている皆さん、これからチャレンジしたいことはありますか
大藪「『この人に任せたら大丈夫』と、利用者さんや家族さんだけでなく、多職種からも思われるような、頼りがいのある看護師になりたいです」
西「在宅は制度をしっかり知る必要があるので、ケアマネジャーの資格に興味があります」
中田「精神面を支える看護が好きで、今年度、認知症認定看護師の学校に行くんです。利用者さんに数ヶ月会えないのは寂しいですけど、頑張って勉強してきます」
新矢「重症心身障害児の子たちが増えてきているので、知識を増やして障害の子ども達と関われたらと思っています」
チャレンジ精神も旺盛で今後が楽しみです!
Q10 皆さんは学生さんと年代が近いので、訪問看護には興味はあるけれど就職するか迷っている方へアドバイスをお願いします
西「今は働き方が色々あるので、やりたいことをやったらいいと思います!」
大須賀「在宅はいつでも来れるので、興味があるところに行ってからでも大丈夫!」
山下「迷いがあるのであれば、一旦病院に行くのもいいですが、強い思いがあるならば、新卒からでもやっていけます!」
新矢「私はハートフリー新卒採用第1号です!当時は今より情報がなかったので、学校の図書館にあった『訪問看護と介護』という雑誌のバックナンバーを片っ端から読んで、ハートフリーを見つけました!訪問看護を一から学んで吸収するのも良いと思います」
Q11 学生時代にやっておくと良いと思うことはどんなことですか
西「学生時代は授業をしっかり受けるのが1番だと思います(笑)」
大藪「訪問していると、相手の仕事も趣味もさまざまです。興味を持って話が聞けるように、色んなことに興味を持つことは大事だと思います」
ハートフリーで経験を積んだ先輩方は、自分がしてもらったことを後輩にしてあげようと思って指導をするという良い循環が浮かび上がって見えました。
また、人材育成は看護と同じようにアセスメントが大事なのだと感じました。こう考えると看護師は人材育成に向いているのかもしれません。ハートフリーの教育は「人材育成」ではなく「人財育成」とも言えます。つまり、「人を宝のように大事に育てている」事業所がここにあるということです。
田端「よく『新人育成についてマニュアルはありますか?』『チェックリストはありますか?』と聞かれる事があるのですが、実際ステーションにはないのです。個々に成長のペースや経験できるタイミングが違うので、育成について全員一緒ではないと思っています。ただ、人(仲間)を大切にして、丁寧に育てる気持ちを持って育てるようにしています。その気持ちを自然に皆が引き継いでくれていると側で感じています。本当に皆に感謝です」
宝積「みんなハートフリーやすらぎが好きなんですよね。みんな上司の人柄が大好きだから、大好きな人の大事にしているものを大事にしたいって、みんな同じ気持ちでいると思います」
大橋「何をおいても、職員がいっちばん大事。利用者さんをケアする職員みんなが幸せじゃないと」
この言葉がハートフリーの根源なのだと思いました。3人で始めた開設当初、経営的にも余裕があったわけではなく、職員どうし意見の違いからぶつかり合うこともあったそうです。でも、気持ちはいつも前向き。そして、今がある。例えば、もし何かが起こった時「うちの職員は間違っていません」と堂々と言えるよ、と言い切る大橋さん。大橋さんは所長さんを信頼し、所長さんは育成する先輩看護師を信頼し、先輩看護師は新卒看護師の成長を信じ、新人看護師はステーションの先輩みんなを信頼している。信頼が絆となって輪を描いているからこそ、言い切れるのですね。
どんな立場の人に対しても人を大事に思う気持ちはブレず、地道にたゆまぬ努力を積み重ねてきた幹部の皆さん。事業所が大きくなって大所帯になっても、「人に興味を持つこと」「丁寧に接すること」に変わりなし。新卒の看護師が就職する、誰も辞めない、そして地域から選ばれる事業所になる秘訣はマニュアルではありませんでした。あったのは、人を思う優しい笑顔と、『自分を大事にしてもらっているから、利用者さんを、後輩を、学生さんを、多職種を大事にしたい。大事にしていることをともにしたい』というマインドでした。『訪問看護ステーション ハートフリーやすらぎ』ここは、関わる人たちの間を、あたたかいハートがくるくる循環する事業所でした。

スペシャルサンクス
ハートフリーの看護師は世界一 藤田さん(ご利用者様)
ハートフリーの皆さんには10年くらいお世話になってるけど、ここの看護師さんは世界一ですわ。病院から訪問看護を紹介された時は、病院から見放されて俺も終わりやなと思ったわ。食道ガンになって、これはもうあかんかなとちょっと鬱になって、横断歩道の上に毎日上がっては、いつ飛び降りようかと考えてたんや。そしたらハートフリーの看護師さんに、『そんなことしとったらあかんで』って、よー怒られてん。そんで毎日来てくれはるし、アホなこと言えるし。今はほんま極楽やで。若い看護師さんもほんまに優しいし、俺にしてみたら孫みたいな子やけどな。ほんまにありがたいですわ。
安心と信頼のハートフリー 小西さん(ハートフリーの職員・お子さんがナーシングデイを利用)

ハートフリーの良さは、いろんな意見を提案してくれるところです。例えば、入院中に残尿があるから家で導尿するように言われたんです。必要性もわかるのですが、1つ手技が増えるのって家族にしたらかなり負担が大きいんです。そしたら、ハートフリーさんから「ほんまに残尿があるかポータブルエコーで調べてみよう」と意見をいただいて。エコーで見ると思った以上に尿がない。しっかり出ているから、今は導尿する必要がないと判断してもらえて、負担が減りました。通学の時にもハートフリーさんにお願いしていますが、この子の生活を第一に考えてくれるので生活が豊かになっています。