訪問看護師向け在宅看取り教育プログラムの開発過程
PENUT、PENUT-Tは日本訪問看護財団が日本財団の助成を受け、5年計画で完成させたエビデンスに基づくプログラムです。

※ 検討委員:在宅看取りに精通した医学、看護学、介護学の有識者から構成
※ ワーキング委員:在宅看護学または教育学の大学教員および大学院生から構成
※ 在宅看取りに精通した専門家:検討委員会で推薦を受けた在宅看取りに精通した医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、介護支援専門員
※ 教育プログラムに精通した専門家:緩和ケア教育の指導者プログラムの企画・運営に携わってきた者
初任者研修モデル事業
訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム(PENUT)の有効性を検討することを目的に、初任者研修モデル事業を実施しました。本事業は公益財団法人日本訪問看護財団研究倫理委員会の承認を得て実施しました(No.2021-01)。
対象・募集方法
2021年9月に以下1~5全てを満たす方200名を上限に募集しました。
- 訪問看護に従事して6か月以上4年未満
- 在宅看取り初心者(未経験もしくは数例程度の経験)
- 所属部署の管理者から推薦を受けている
- 全てのアンケート調査に回答できる
- 訪問看護の基礎的な研修を受講している(例:訪問看護師養成講習会、訪問看護eラーニング(訪問看護基礎講座)など)
調査・分析方法
本事業はwait list control群を用いた無作為化比較試験です。参加者160名を施設経験年数と在宅看取りケア件数で層別化した後、2021年11月にPENUTを受講する介入群と、2022年1月に受講するwait list control群にランダムに割り付けました。オンライン質問紙調査をベースライン(T0)、介入群研修直後(T1)、介入群研修2か月後(T2)、各群研修半年後(T3)の4回実施しました。

調査項目を以下1~5に示します。
1~3はT0~T3全ての調査で、4、5はT0で収集しました。T0における「4. 個人属性」と「5. 所属施設の属性」、「1. ケア知識」と「2. ケア態度」のT0→T1変化量、「3. ケア件数」のT0→T2変化量を、カイ二乗検定またはt検定を用いて両群間で比較しました。
- ケア知識(在宅看取りケアの知識)
- 知識テスト
- ケア態度(在宅看取りケアへの態度)
- Frommeltのターミナルケア態度尺度日本語版
- 緩和ケアに関する医療者の自信・意欲尺度(訪問看護バージョン)
- 緩和ケアに関する医療者の困難感尺度(訪問看護バージョン)
- ケア件数(在宅看取りケア件数)
訪問看護師としての臨死期のケア人数 - 個人属性
就業場所、年代、職位、取得資格、施設看護/訪問看護の経験年月 等 - 所属施設の属性
看護職員の常勤換算数、2020年度の報酬上の在宅看取り件数 等
結果
全ての調査に参加した115名(介入群61名、wait list control群(以下、コントロール群)54名)の結果を示します。
個人/所属施設の属性(T0)

※ a:カイ二乗検定 b: t検定 ※n(%)、平均±標準偏差
※ 報酬上の在宅看取りケア件数: ターミナルケア加算、訪問看護ターミナルケア療養費(在宅ターミナルケア加算)の合計
ケア知識の変化
介入群はPENUT受講後、ケア知識がコントロール群よりも有意に向上しました。

※t検定
ケア態度の変化
介入群はPENUT受講後、コントロール群よりも「死にゆく患者へのケアの前向きさ」「終末期ケアに対する自信」「医師とのコミュニケーションへの自信」が向上し、「症状緩和」の困難感が減少しました。

※t検定
まとめ
PENUTは、訪問看護師の在宅看取りケア知識の向上、ケア態度(終末期ケアや医師とのコミュニケーションへの自信)の向上に有効であることが明らかとなりました。PENUTのケア件数への効果については、中長期的に評価していく予定です。
文献
濱谷雅子, 平原優美, 小沼絵理, 沼田華子, 野口麻衣子, 菱田一恵, 岡本有子, 竹森志穂, 新幡智子, 栗田佳代子, 山本則子. 無作為化比較試験による訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム(PENUT)の有効性の検討. 日本看護科学会誌, 44, 218-227, 2024. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/44/0/44_44218/_pdf/-char/ja ※優秀論文賞(2025年12月)
濱谷雅子, 菊地よしこ, 沼田華子, 山田享介, 野口麻衣子, 平原優美, 小沼絵理, 佐藤美穂子, 山本則子. 機能強化型訪問看護管理療養費を算定していない訪問看護事業所の在宅看取り実施に関連する要因 ―教育的要因に着目して―. 日本看護科学会誌, 42, 578-587, 2022. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/42/0/42_42578/_pdf/-char/ja
学会発表
濱谷雅子, 平原優美, 小沼絵理, 沼田華子, 野口麻衣子, 菱田一恵, 岡本有子, 竹森志穂, 新幡智子, 栗田佳代子, 山本則子. 訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム(初任者)の無作為化比較試験による評価. 第43回日本看護科学学会学術集会, 2023年12月 ※最優秀演題口頭発表賞
濱谷雅子, 菊地よしこ, 平原優美, 小沼絵理, 佐藤美穂子, 沼田華子, 山田享介, 野口麻衣子, 山本則子. 訪問看護事業所における在宅看取りの実態およびその関連要因. 第41回日本看護科学学会学術集会, 2021年12月
指導者研修モデル事業
訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム(PENUT-T)の有効性を検討することを目的に、指導者研修モデル事業を実施しました。本事業は公益財団法人日本訪問看護財団研究倫理委員会の承認を得て実施しました(No.2023-002)。
対象・募集方法
2023年7月~8月に以下1~5全てを満たす方50名を上限に募集しました。
- 訪問看護師として従事している
- 訪問看護師として在宅看取りに3年以上携わったことがある
- 所属施設や地域でPENUTを開催する意志がある
- 管理者または所属部署責任者の推薦が得られる
- 名前および所属を掲載したPENUT指導者リストを公開することに同意できる
調査・分析方法
アンケート調査を研修(PENUT-T)受講前と、受講後に実施しました。
調査項目は以下の通りです。
研修受講前
- 個人属性
就業場所、年代、職位、訪問看護の経験年数、取得資格(認定看護師・専門看護師等)、ELNEC-Jコアカリキュラム指導者プログラム/SPACE-N受講の有無、看取りの経験等 - 施設属性
看護職員の実人数、令和4年度1年間のターミナルケア加算および訪問看護ターミナルケア療養費の算定件数等 - ルーブリック
「在宅看取りに関する現状の理解」「PENUT指導者の役割の理解」「PENUT-T指導者の役割の理解」「自施設での研修開催に向けた体制の整備」「地域での研修開催に向けた体制の整備」「ロールプレイにおけるファシリテーターの役割の理解」「受講者が学習に集中できる環境づくり」「受講者が主体的に学べる環境づくり」「PENUTを用いて開催した研修の評価」の9項目を4段階で評価 - SAFFS(Self-Assessment Facilitator Functions Scale)
「構造化と進行の効力感」「グループへの信頼と尊重の感覚」「気づきを活かす柔軟な姿勢」という3つのドメイン(計21項目)から構成される、7段階で評価するリッカート尺度 - ELNEQ(End-of-Life Nursing Education Questionnaire)
「教育に対する自信」「教育への意欲」「教育の方法」「質の高いエンド・オブ・ライフ・ケアの達成への意欲」「教育の参加者への影響」という5つのドメイン(計20項目)から構成される、5段階で評価するリッカート尺度
研修受講後
- ルーブリック
- SAFFS(Self-Assessment Facilitator Functions Scale)
- ELNEQ(End-of-Life Nursing Education Questionnaire)
結果
研修前後のアンケートに回答した39名の結果を以下に示します。
個人/所属施設の属性

ルーブリック、SAFFS、ELNEQの研修前後の比較
ルーブリックでは、「在宅看取りに関する現状の理解」「PENUT指導者の役割の理解」「PENUT-T指導者の役割の理解」「ロールプレイにおけるファシリテーターの役割の理解」に関する得点が、研修後に有意に増加していました。
SAFFSは、すべてのドメインの得点が、研修後に有意に増加していました。
ELNEQでは、「教育の方法」「質の高いエンドオブライフケアの達成への意欲」の得点が、研修後に有意に増加していました。

まとめ
PENUT-T を受講した参加者は、グループワークやロールプレイの方法、ファシリテーターの役割についての理解が向上しました。そして研修後には、ファシリテーションの構造化と進行への効力感等が高まっており、PENUT-Tはファシリテーションに対する自己効力感を高めることが示されました。さらに、所属する施設や地域におけるエンド・オブ・ライフ・ケアを向上させる計画への意欲も高まり、PENUTの企画運営に対する意欲の向上という点においても、PENUT-Tは有効であることが明らかとなりました。
文献
濱谷雅子, 平原優美, 小沼絵理, 新幡智子, 沼田華子, 野口麻衣子, 菱田一恵, 山田享介, 岡本有子, 竹森志穂, 栗田佳代子, 山本則子. 訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム(PENUT-T)の有効性の検討. 日本看護科学会誌, 46, 260-272, 2026.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/46/0/46_260/_pdf/-char/ja
学会発表
濱谷雅子, 平原優美, 小沼絵理, 沼田華子, 野口麻衣子, 菱田一恵, 岡本有子, 竹森志穂, 新幡智子, 山田享介, 栗田佳代子, 山本則子. 訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム(指導者)修了者のファシリテーションおよび研修開催の課題と対策, 第45回日本看護科学学会学術集会, 2025年12月
濱谷雅子, 平原優美, 小沼絵理, 沼田華子, 野口麻衣子, 菱田一恵, 岡本有子, 竹森志穂, 新幡智子, 山田享介, 栗田佳代子, 山本則子. 訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム(指導者)(PENUT-T)の有効性の検討, 第44回日本看護科学学会学術集会, 2024年12月