葉っぱ葉っぱ

ナイチンゲールの夢を日本にも・・

水彩水彩

 私は長年ナイチンゲール思想研究に携わってきており、その関連領域である“看護歴史”にも関心を寄せてきた。訪問看護の歴史はとても面白い!

 社会における看護の営みは、人類誕生以来連綿と続いているが、訪問看護の歴史はさして長くはない。英国の歴史家・ルーシー・セイマーはその著『看護歴史』(1933)の中で、「訓練された看護師による組織化された訪問看護活動は、1859年以前には遡れない。それは英国において開始された。」と述べている。訪問看護はリヴァプールのウィリアム・ラスボーンとフロレンス・ナイチンゲールによって開始された事業である。事業が順調に発展していくなかで、ナイチンゲールは新聞紙上で国民に向けて次のように述べた。①訪問看護の目的は、在宅の貧しい病人にこれまで経験したことのない第一級の看護を贈ること、②究極の目的は、すべての病人を家庭で看護することである、と。私はこの言葉をナイチンゲールの遺言として受け止め、いつか訪問看護に携わってみたいと願った。

 今から50年前の日本には、制度化された訪問看護システムはなかった。時代は病院看護の最盛期を迎えようとしていたからである。人の誕生と看取りの場は、ともにそれまでの在宅から病院へ移行しており、国民の間には医療モデルが広く浸透していった。

 しかし時代は動き、多死高齢社会が到来すると、最期まで自分の住み慣れた家で暮らしたいと願う人々が増え、地域在宅ケアへの舵取りがなされてきている。今こそ“訪問看護の出番”である。
私は病院看護師から転じて、看護教育とナイチンゲール研究に集注した人生を歩んできたが、ようやく教育の場から離れることができた今、若き頃に抱いていた夢を形にしたくなった。そこで小さく誕生させたのが「訪問看護ステーションユーナ」である。

 「ユーナ」という名前は、ナイチンゲールが“ユーナ姫とライオン”の物語に因んで、殉職した最愛の弟子、アグネス・ジョーンズに付けた呼称である。アグネスはナイチンゲール看護学校の初期卒業生として素晴らしい教育を受け、その後貧しい人々が収容される大病院に派遣された。当時の病院は荒れすさんだ状態で、看護は困難をきわめたのだが、アグネスはユーナ姫のように獰猛なライオン(患者)を手なづけ、第一級の看護を提供し、病院を教会のような静けさと荘厳さに満ちた穏やかな場所に変化させたのであった。

 私たちも利用者さまのもてる力に力を貸して、第一級のケアを提供できるようでありたいと願う。
 

TOPに戻る